りんどうの会~がん患者遺族の会・佐賀~

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五周年記念講演から(第1回)

2017/09/29

第1回(グリーフケアについて)

 グリーフケアは悲嘆回復と訳されます。言葉では言い尽くせない深い悲しみを経験した遺族が、その悲しみから回復していく過程のお手伝いをさせていただくのが、グリーフケアです。

 グリーフケアを行うための研修も開催されています。私も日本グリーフケア協会という団体でアドバイザー資格の勉強をして、認定は受けていますが、この資格がないとグリーフケアを行えないというものではありません。

 また、一般的にはグリーフケアはがん遺族に限ったことではなく、がん以外の病気や、事故、災害など、その原因となった出来事ごとにケアを行なっています。

 

 さて、りんどうの会を立ち上げたわけですが、会の名称を「りんどう」にしたのは、先ずはその花言葉です。「君の悲しみに寄り添う」という意味があります。九州では、九重・阿蘇地域でよく見受けられる花です。紫色の可憐な花は、まさに私たちが目指すグリーフケアのシンボルのように思えました。

 

 りんどうの会もそうですが、多くのグリーフケア・サロンはグループサロンという形をとっています。それは遺族の方々が車座になって、ご自分の悲しく辛い体験や、今現在の心境などを順番に話をしていくものです。

 

 会の運営は、最初の頃は一人一人が話す時間をある程度決めていましたが、会を重ねるごとにその日の話の内容などで長短も自ずと調整がついてきました。

 

 こういったグループサロンの経験のない方には、ただ単に自分の心境や悲しみの振返りを話すだけじゃないか、単なるおしゃべりの会じゃないか、と思われる方もいるかもしれません。ちょっと見た目にはそう写ってしまうのも確かですが、実はこの「話ができる環境」というものがとても大切なのです。

 

 同じ経験をした者の集まりだからこそ、「私の気持ちをわかってくれる」と言う安心感から、涙を流す事もできるのです。心を開いて話をすることもできるのです。話していて会員の方々の優しさが伝わってくるのです。自分の居場所があると感じるのです。現に、私自身がこの会にとても救われました。

 

 見た目にはわからないと思いますが、遺族の悲しみは日々異なります。なんでもない風景や言葉に過剰に反応して涙が出てきます。そんな時にこの会の中で話をさせていただく事で、心が落ち着いてくるのを感じていました。

 

 話の内容はその時々で変わり、これを言ってはいけないというものはありません。ただ、誰かが話をしている時には、私語は謹んでしっかりと話を聴いて、途中で口を挟まない。すなわち傾聴ということを実践していただきます。

 

 また、お互いの悲しみを比較したり、その心境に対して励ましや意見を言うこと、アドバイスや自分の体験を押し売りすることは遠慮してもらっています。

 

 また、必ず話さなければならないと言う事もありません。話したくない時、話すことがないときは、他の方の話を聴くだけでもいいのです。ここにいるだけで気持ちが落ち着くような場所を提供できることが、このサロンの大きな目的です。遺族の居場所であることが大切なことなのです。

 

 この5年間りんどうの会を続けてきたことで感じたことですが、がん遺族の方々の悲しみや苦しみには特徴があります。特筆すべき特徴としては「生き残ったことに対する申し訳なさ」や、「故人に対してもっとしてあげられることがあったのではという後悔の念」が挙げられます。

 

 自分だけが生き残ったことは、裏返せば「どうして私を残して逝ってしまったのか」という亡くなった人への思いです。自分も一緒に死んでしまいたかったとまで思い込む人もいます。生き残ることの辛さをひしひしと感じるものです。

 

 それは、現実的には、明日からの生活に対する経済的な不安もあります。ハンカチの場所さえわからないなど身の回りのことに対する不安もあります。残されたことの悲しさだけでなく、そのようなことまでが降りかかってきます。

 

 また、病名が分かってから、その時が来るまで1日1日命の炎が消えるまでを見続ける辛さ。交代してあげることができない現実、場合によっては患者さんよりも病気に多くの情報を聞かされている現実がそこにあります。

 

 後悔の念とは、闘病中に本当に患者に寄り添うことができていたのか、患者の希望に沿うことができたのか、もっと他にも出来ることがあったのではないのかという思いです。おそらく間違いなくその時その時々に精一杯のことをしてきたのだと思います。それでもやはりどこか納得できない自分がいます。もっとしてあげれたことがあったと思い続けるのです。

 そういう思いを引きずりながら遺族は生きています。

 

 また、周りの人の励ましの言葉が返って心を苦しめたり、何気ない一言で傷ついてしまうことも多くの方が語られています。

 お電話でお話した方は、親戚や友人が気遣ってくれてよく尋ねてきてくれるが、彼らの励ましの言葉は明るすぎて眩しいだけ、そっと一人にしていて欲しいと言われていました。

 

 また、必死の思いで明るくしていると、「もう元気になったのね」と言われて、家に帰ってきて大泣きしました、というお話もありました。

 よく耳にするのは、頑張ってねと言われるのが一番辛いということです。悲しくて辛くて必死に頑張っているのに、これ以上何を頑張らねばならないの、もう頑張れない。励まそうと思ってかけられる言葉が、遺族の心を傷つけていることは多くあるものです。

 

 だからこそ、このような遺族の思いに寄り添うには、やはり同じような体験をした遺族が集うサロンはとてもいい効果が出せるものと思っています。

 頑張らなくていいよ、泣きたい時は涙を流しましょうよといってもらったときに、安心感が広がったものです。

 

 グリーフケア・サロンりんどうの会とはこの様な会です。一人でも多くの方に参加していただきたいのですが、ここに来るまでには大きなハードルがあるようです。

 

 これまでにも多くの方々から入会についてお問い合わせいただき、資料を差し上げたりしてきましたが、どうしてもサロンの扉をノックする勇気が出ないと言う声を聞いています。これは私たちりんどうの会だけではなく、他のグリーフケアの方々にも共通の話です。

 

 本当に自分の悲しみが癒されるのであろうかと言う不安に加えて、どのような方々が会員としているのだろうか、宗教的な勧誘や高いもの、例えばツボのようなものを買わされるのではないだろうかと言う不安もあるように聞いています。

 今でも、遺族として悲しみの中でもがき苦しんでいる方がいます。出口を探そうとして模索している人がいます。そう言った方々に、先ずはこのようなサロンがあることを知っていただきたいと思います。そして扉をノックする勇気の後押しをしていただきたいと思います。

 

 いつの日か笑顔が戻ります。いつの日かしっかりと前を向くことができます。でも、それは故人を忘れたと言うことではありません。悲しみを忘れたと言うことでもありません。自分の心の中に故人や悲しみの居場所ができたということです。

 その人を忘れることは決してありません、いつでも、今でも私たちの心に寄り添っています。

 

 これからも、りんどうの会は一人でも多くのがん遺族の方に寄り添っていきたいと思います。

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